高周波加熱とは?(VOL-5)



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◇◇◇◇◇◇VOL-5「高周波誘導加熱の原理(その3)」◇◇◇◇◇◇

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今回は、高周波誘導加熱を理解するときに重要な、「電流浸透深さ」について考えます。

高周波で電線を含む金属中を流れる電流には、次の性質があります。
(正確には、『高周波』でと限定するのは正しくなく、『高周波になると、その現象が顕著に現れて来る』という表現が正しい。)
(1)高周波の電流は金属中の表面を流れる。(「表皮効果」と呼ばれる)
(2)近くに反対向きの電流があると、その電流の方向に引っ張られる。(「近接効果」と呼ばれる。)

具体的には、次の図(a)のように独立した金属中を流れる電流は、その金属の外周表面を流れるが、
図(b)のように、反対向きに電流が流れている金属が近くにあると、両者とも、相手に近い表面のみを流れ、
それぞれの電流の流れる表面の厚さを「電流浸透深さ(以下記号δで示す)」と呼びます。


実際には、導体の表面に集中して流れる高周波の電流は、浸透深さ(δ)の厚さを均等に流れる訳でなく、
下図に示すように、表面ほど電流が多く、厚さ方向内部にいくに従い減少する分布を持って流れます。


電流浸透深さは、次の式で計算できます。


式の中で使われる各記号の意味は、次の通りです。
ω:各周波数=2πf(rad/s)
ρ:電流の流れる金属の抵抗率(Ωm)
μ:電流の流れる金属の透磁率=μsμ0(H/m)
f:周波数(Hz)
μs:電流の流れる金属の比透磁率(−)
μo:真空中の透磁率=4π×10^(-7)(H/m)

金属の比透磁率μsは、磁石につく材料でμs>1、磁石につかない材料でμs=1となります。
また、μs>1の同一材料であっても、置かれる場の磁界の強さで、μsが変化します。
(一般的には、磁界の強さが大きくなると、μsは小さくなる。)

よく、誘導加熱の対象に用いられる一般の鉄材料(炭素鋼など)では、概略検討の場合は、μs=100〜200程度と考えて良いでしょう。
また、金属の抵抗率ρは、温度によって変化するので、注意する必要があります。

下表に、代表的な金属の各周波数における電流浸透深さの具体例を示します。
なお、用いた数値は概略の値ですので、正確には、磁界の強さ、温度などを考慮する必要があります。




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